ファースト写真集「女の口は嘘をつく為にある」/本橋里紗さんインタビュー

tofu22004-08-24



“なぜだかポロポロって涙が出てしまったんです”

 大きな瞳から涙がこぼれ落ちている。その瞳でこちらを見つめている。2001年の“サントリーモルツ生ビール・キャンペーンガール”をつとめた本橋里紗さんのファースト写真集「女の口は嘘をつく為にある」の表紙だ。「この写真が表紙になるなんて、自分でもビックリ!」。ご本人はとっても気さくに話す明るい女の子だ。そんな澄んだ瞳がかわいらしい本橋さんにインタビュー!



 書店でこの写真集を見かけたら、思わず驚くだろう。ほとんどメイクをしていない女の子が、キャミソール姿で大粒の涙を流しているのだ。ラフに結んだ三つ編みと斜めに掛かった前髪の隙間から潤んだ瞳でこちらを見つめている。それだけでもドキッとしてしまうのだが、さらに驚かされる言葉がこの写真に添えられている。「女の口は嘘をつく為にある」。


 “え、そうなの?” 思わずそうつぶやきながら立ち止まってしまう人は多いのではないだろうか? その涙で嘘をついているのだろうか? 女の子はみんなそうなのだろうか? 次々と謎の不安が広がっていく…。ここに写っているこの涙は本物なのだろうか? 


「いい意味でも悪い意味でもインパクトは強いですよね(笑)。確かに泣いている写真は珍しいけれど、目薬をさして演技したものだったら綺麗な泣き顔になるかと思うけど、これはね(笑)。鼻を咬んだり目をこすったりして。メイクも取れちゃっているし、鼻も赤くなっちゃってるし。」


伊藤:本気泣きですよね。


「そうなんです。この写真は撮影の一番最後の日に撮ったモノで、自分でも分からないまま、なぜだかポロポロって涙が出てしまったんです。こんな状態だと撮影は無理だから、ちょっとお休みさせてもらおうと思っていたら、カメラの方に目線をくれないかと言われて。でもどうしていいのか分からなくて。だたカメラを呆然と見つめていたのがこの写真なんです。だからこの涙は本物なんですよ!


 たぶん、ホッとしたからだと思います。初めての写真集を作るということで、撮影に対して意気込みがあったのですが、それと同時に、どんなことをしたらいいのだろういう不安や戸惑いもありました。だから撮影最後の日ということで、緊張の糸がフッと切れたのかなと思います」


  タイトルにある“嘘”という言葉に惑わされそうになるが、この涙は、不安から解き放された安堵の涙だったのだ。本物の涙だからこそ、“嘘”という言葉の意味が逆説的に感じられるのかもしれない。意気込みと戸惑いの中、敢行された撮影場所はどのように決められたのだろうか?


 「スタッフと話し合って決めました。最初はハワイとかがいいなっなんて思っていたんですけど、今回はしっとりとしたイメージで撮ってみようということになって、ヨーロッパのイメージがあるオーストラリアの東海岸にあるブリスベンになりました。キャンペーンをやっている時やグラビアなどでもそうなんですけど、いつも私って、口を大きく開けて明るく笑っている写真になってしまうんです(笑)。だから今回はいつもの“陽”のイメージではなく、“陰”のイメージで写真集を作っていこうと決まったんです」


伊藤ブリスベンはどのような街でしたか?


 「海があり山があり明るい青空が広がるといった、リゾート地なんですけど、ヨーロッパ的な建物や雰囲気もたくさんあって。大自然がたくさんある土地なので、ロケ地として海辺や大きな岩がゴツゴツとあるような山など、たくさん候補が挙がったんですけど、今回は、この土地独得のヨーロッパ的な空気感を活かしたものにしようと、海辺の近くにあるリゾートハウスやホテルで撮影しました」


伊藤リゾート地でありながら、ヨーロッパの雰囲気があるブリスベンで撮影されて、タイトルには“嘘”の言葉がある。自分の二面性を表現してみた、といった感じでしょうか?


 「この写真集を作るときに考えたことは、いろいろな私を表現できたらいいな、と思ったんです。ただの喜怒哀楽だけでなく、積極的な私もいれば、ちょっと卑屈になってしまう自分もいる。複雑な感情を写真で見せることができたらいいなと。


 でも、実際に撮影が始まってみると、気持ちを表現するのって本当に難しいなって実感しました(笑)。自分でもアイデアを出したりして撮影したのですが、初めてということで緊張してしまったのもあるかもしれないです。でも、そうして撮影した写真を一冊にまとめてスタッフの皆さんと初めて見た時は、うれしかったですね。写真の中からストーリー性を感じてくれる人たちがたくさんいたんです。それを聞いて、本当にうれしかった。がんばっていたことや撮影中に模索していた感情が、写真に表現されていたんだって。


 写真集のタイトルを決める時も、出来上がった写真をみて、そこから感じた気持ちを元に生まれたんです。でも最初はちょっと強い言葉のタイトルだなと思いました。“女の口は嘘をつく為にある”って言い切っちゃてるし(笑)。それに、泣き顔の写真にこのタイトルが付いていると、本当に泣いていた写真なのにウソ泣きに見えてしまうかもって。でも、一冊を通して写真も見てもらえば、そこからいろいろなストーリーを感じてくれるんじゃないかと思います。写真を見た人それぞれが、自分なりのストーリーを作ってくれるとうれしいです!」


  “嘘”をつく。多面的な自分を表現する方法のひとつだ。写真で見せる自分とドラマや映画での自分、いろいろな側面を表現するためには、本当の自分の中にも多くの側面があってこそ、表現の幅が広くなる。高校時代にはチアリーディングで全国大会で優勝したほどのアクティブな本橋さんは、体を動かすことが大好きだという。さらに、料理も好きで、お菓子作りの話になると、大きな瞳を今まで以上にキラキラさせた。最近は陶芸にハマっていて、実はスカイダイビングにも挑戦してみたい! などなど。好奇心旺盛な本橋さんの魅力は、これからまだまだ広がっていくはずだ。テレビ、映画、写真集、そしてDVD「cheerful」などで見せる本橋さんの姿、どれも見逃せない。

【2003年3月取材】
撮影場所:Woman.excite CAFE・有楽町西武A館8F