運命のつくりかた

tofu22005-07-09

フランスamazonでサントラを買ったのだけれど、廃盤だかなんだかで、ないとのこと。ってことで映画をDVDで買ったら、特典として、サントラ全曲入ってた。うふふ。

この作品の監督が、先日の横浜フランス映画祭で新作『描くべきか、愛を交わすべきか』とともに来日していたのだけれど、まあ、取材するには、日本での知名度があまりにもなく断念。でも、この監督の作品はぜひとも観ておきたい。なぜって、一昨年に同映画祭で観た、この『運命のつくりかた』が、とてもおもしろいから。それ以来、すっかり彼らのファン。当時、インタビューをさせていただいたのだけれど、とてもシャイな弟さんと人なつこいお兄さんで、好印象。記事にはなっていないけど、こんな話をしましたってことで、記録として、ここに紹介します。。


■『運命のつくり方』アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー監督

 とても恥ずかしがり屋の兄弟だ。しかしとてもユーモアがある。それは彼らが監督した『運命のつくり方』を観ればすぐ分かる。ミュージカル好きの駆け出し映画監督と、キャリア・ウーマンが恋に落ちて始まる3部構成のラブ・ストーリーで、ミュージシャンのフィリップ・カトリーヌが奏でるアコースティックなギターの音色で、ユーモラスな愛のおとぎ話にもすんなりと入ることができるのだ。そんなラリユー監督に恋愛について聞いた。


■自分にとって彼女(彼)は何なのか、なぜその彼女(彼)が好きなんだろうってことを、よく考えるべきだね(アルノー・ラリユー)

    • ミュージカル好きの監督、という設定です。モデルがいたのですか?

ジャン=マリー(兄):特にいたわけじゃないんだ。ミュージカル好きの監督っていうのは、彼が古くさい映画を撮っている、ということを表現している。アパルトマンの家具はパリのものじゃなきゃいけない、とか、古くさくてつまらないことにこだわっている。
 ミュージカル・コメディって、フランスではあまり評価されないんだ。どんなにいいものを作っても、観客が受け入れてくれない。ジャック・ドゥミというミュージカルが得意な監督がいるけど、彼も素晴らしい作品を撮っているのに、なかなか受け入れてもらえないんだ。

    • 『運命のつくり方』のテーマは?

ジャン=マリー(兄):この映画はミュージカル・コメディのスタイルを取っている。「歌」って、フランス語では「chant」って言うんだ。「歌で」は「en chant」。ところが、それを動詞にして、「enchanter」っていうのがあるんだけど、それは「初めまして」っていうあいさつになる。クラシックな意味だと「あなたに魅了されている」って意味なんだ。だから世界を歌にすることが、「世界を魅了することである」っていう感じで、掛詞にもなっているんだ。夢が現実に移り変わっていくって感じなんだよ。
 それから人物については、男であるボリスが、女性的に(家庭の仕事が増える)、妻のマリリンが男性的(仕事が忙しくなっていく)なっていく。男女の役割自体も変わっていく、そういう世界を描きたかったんだ。

ルノー(弟):この映画は三部構成。まだまだ愛の冒険を続けていくということを含めて、愛を信じなさいって伝えたかったんだ。

    • 男女が出会い、そして愛し合う、しかしお互いを信じられなくなり別れてしまうが、数年後、また出会ってみたら、やはりお互いを愛していたと気付く。素敵な愛の物語です。もし、恋人を信じられなくなった友人がいたら、どんなアドバイスをされますか?

ジャン=マリー(兄):男の友人だったら、ピレネーの山中に行ってしまえ! って言うな(笑)。自給自足で暮らしてみて、子供の世話もできる、何でも自分でできる男であるってことを示すことができるようになったら、戻ってこい! 

ルノー(弟):ピレネーに籠もっているときに、なぜその女の子が好きなんだろうってことを、よく考えてるべきだね。彼女の視線がなければ生きていけないと思うのは何故か、自分にとって彼女は何なのか、そしてどうしても彼女を取り戻したいのか、取り戻すにはどうしたらいいのか。それらをきちっと考えて、それから戻ってきて、この問題に向き合うべきだと思うよ。

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【アルノー・ラリユー(弟)&ジャン=マリー・ラリユー(兄)】
<profile>
ピレネー地方出身の兄弟監督。短編監督として注目を浴び、各国の映画祭に出品後、97年い初長編作品を発表。ピレネーへの愛を作品に反映しながら、全ての作品を二人三脚で制作している。


■作品データ■
『運命のつくり方』Un homme, un vrai
2002年/121分(フランス公開:03年5月28日)
監督:ジャン=マリー・ラリユー、アルノー・ラリユー
出演:マチュー・アマルリック(『そして僕は恋をする』)、エレーヌ・フィリエール、ピエール・ペレ

<イントロダクション>
新進気鋭ラリユー兄弟の不条理とユーモアの注目作。恋に落ちた男女を3部構成で描くミュージカル・コメディ。主題歌を含め、本作の音楽を担当しているのは、フレンチ・ポップスの旗手、フィリップ・カトリーヌ。

<作品紹介>
 映画監督を目指すボリス(マチュー・アマルリック)は、企業のPRフィルムの制作中。そこで出会ったキャリア・ウーマンのマリリン(エレーヌ・フィリエール)と恋に落ち結婚。5年後、ふたりの子供たちに恵まれ、マリリンの仕事も順調。しかし、主夫業に嫌気がさしたボリスが別れを切り出そうとしたとき、マリリンが女性と失踪。それから5年。ピレネー山脈で山岳ガイドとなったボリスの前にマリリンが現れた…。