本日の試写

tofu22004-07-02


■『モンスター』*1


どこからみてもホワイト・トラッシュ


美しすぎる人というのは、一度はブサイクキャラで、演技力を評価してもらいたいたいものなのだろうか。ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』の付け鼻メイク)しかり、ジュード・ロウ(『ロード・トゥ・パーティション』の究極のキズ顔メイク)しかり。美しさだけでハリウッドを生き残るつもりはないわ!ってことか。
「世界で最も美しい50人」に選ばれるほどの美貌を誇るハリウッド・ビューティ、シャーリーズ・セロンも、そんなキャラに挑戦した。実在した全米初の女性連続殺人者アイリーン・ウォーノスを演じた『モンスター』。デ・ニーロもびっくりの意気込みで、眉毛を抜き13キロ増量し差し歯をしたキャラ作りで、アカデミー賞最優秀主演女優賞をゲット。確かに映画の中の彼女は、美しすぎて親近感を持てなかった彼女の印象は皆無。どこからみてもホワイト・トラッシュだ。
アメリカにおけるアメリカ人女性監督によるアメリカ初の女性連続殺人者の人生を描く映画は、女性が観れば感情的に観れるし、男性が観れば社会的に観れる。幼年期に叔父から性的虐待を受け、性を売って生きることしかできない女。足を洗おうにも冷たすぎ世間に逆ギレする女。彼女はある日、ひとりの人間として愛し合える人と出会う。相手は10代の女の子セルビー。セルビーは、冷たく残酷な実社会を知らない。純粋で無垢すぎるがゆえに、アイリーンに寄生するかのように同行する。恋人のように、母娘のように、友人のように寄り添う二人は、それぞれができる唯一の生きる術を駆使していく。アイリーンは性を売り、セルビーはアイリーンに寄生する。
海辺に家を持ち幸せになりたい。それだけなのに、それができない。
女性をモノのように扱う男にレイプされ、殺されそうになった。自衛のために相手を殺した。人を信じられなくなった。悪循環の始まりだ。
そんな中で信じてくれる者と一緒にいたいだけ。そのためだけに生きるのびる。その術が殺人であろうとも。それを淡々と描く。そして、淡々として見える演技をするシャーリーズ・セロン。オスカー受賞も納得です。そして彼女の演技を輝かせる存在感を見せたクリスチーナ・リッチもすごい。というか、リッチがいてセロンが生きる映画だわ。
そんなセロンさん。彼女の演技は主張しすぎず存在感があって好感を持てた。とかく大袈裟な演技が演技力の高さだと勘違いしている国があるけど、それってウザいだけなのに。自然に見えるように演じるのが演技力なんだから。とはいえ、それでも腹が立つほど演技が上手いのはダスティン・ホフマンだろうな。『ムーンライト・マイル』『コンフィデンス』『ニューオリンズ・トライアル』では、若手実力派俳優たちが無残なほどに形無しだったもの。共演者泣かせっつうか。。。


■『16歳の合衆国*2
ふんわりしていて鋭い感情を内包するギター・サウンドが好き。それだけで繊細で壊れやすい感情が伝わってくるから。『16歳の合衆国』には、そんな音楽が全編に流れる。映画のテーマを物語っているようだ。
障害者を殺害した男の子。彼の持つ達観した考え方は、物事に対する感情が強すぎるがゆえの防衛反応。殺した瞬間の記憶がないのは、多感すぎるがゆえのやさしさ。障害者の男の子自身が、自分の存在は同情と嫌悪しか相手に与えないことを知っていることに気づいた時、何をしたらいいのだろう。そして、普通の人たちにとって、愛すべき家族を殺された事実は、一生消えずに心に残っていく。人は弱い。それを知った上で生きるとしても、それは自分への甘えなのではないか。純粋な青年は、生き残る理由を見出せない。それでも世間では、普通の人たちが弱い自分を肯定しながら生き続けている。いい映画です。


■『ヴァン・ヘルシング*3
アクション大好き!怪獣大好き!コメディ大好き! そんな私にとって『ヴァン・ヘルシング』は、「じゃんがらラーメン全部のせ」って感じの映画です。
セクシーでキュートな男、ヒュー・ジャックマンと、クラシカルな佇まいと意志の強さを持つ正統派美女、ケイト・ベッキンセールが、中世ヨーロッパを舞台にドラキュラ退治。オトボケだがモンスター退治用兵器開発のエキスパートの修道僧と、心優しき力持ちのフランケンシュタインも仲間になって、人類最強の敵ドラキュラ伯爵をやっつける!
なんだか分からないけどド迫力のCGあり、シリアスかと思いきやオチのあるズッコケシーンあり、ゴシック調を越えたSF的なドラキュラ伯爵の館あり、とにかく娯楽要素てんこ盛り。そして登場人物が全員美形揃い!中でも狼男になってしまうウィル・ケンプは、現役のバレエ界の貴公子。甘いマスクと逞しさ、さらに演技力もバッチリ。ハンサム大好きな女子たちは、彼の美貌をぜひ大スクリーンで堪能してほしいですね。
ちなみに、この映画の一番ナイスキャラは、天才的化学兵器開発者のデヴィッドウェンハム。『ロード・オブ・ザ・リング二つの塔王の帰還』でボロミアの弟ファラミアやってた人。修道僧の恰好してチョコマカ動き回るその存在感、気にならずにはいられない。