本日の試写

tofu22004-07-16


17歳の処方箋/IGBY GOES DOWN』

昨年から公開を待っていた作品がついに日本上陸!主演はキーラン・カルキン、内容は“サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のホールディン・コーンフィールドのようだ”なんていう批評を見ていたので、期待しないはずがない。キーラン・カルキンは『イノセント・ボーイズ』を観て以来、切なく辛い青春モノを演じさせたらピカイチな存在として、すっかりファンになっていたし、“サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」うんぬん”などというキーワードは、触手が動かないはずがない。

17歳の処方箋』でのキーラン扮するイグビー君は、裕福な家庭に育った17歳の男の子。でも父親は人生へのプレッシャーに押し潰されて精神分裂症、母親は強迫観念に駆られたように他人に威圧感を与えることばかりする。兄はエリート街道まっしぐらの優等生。イグビーにとっては何だかうんざりな毎日で、どこの私立高校でもトラブルを起こし退学ばかりしている。業を煮やした母親が士官学校へ入学させるが、そこを無断脱出し、名付け親の叔父さんの仕事場に無断で居候を決め込む。そこには叔父さんの愛人がいて、愛人の恋人が出入りする。ニューヨークに住むエキセントリックな大人たちと過ごすイグビーは、退屈を持て余している一人の大学生に恋をする。彼女に夢中になるイグビーをよそに、彼女はイグビーの兄に夢中になる。兄にとって彼女は遊び友だちなのは分かり切っている。それでも彼女は自分に振り向いてくれないなんて、どうかしてる、理由が分からない。大人たちも騙しだまし人生を送っているだけ。突然母親の最期を迎えるイグビー。エキセントリックな状況での母親の死を目の前に、反発心しか感じなかった彼女に何故だか許しを請うイグビー。ニューヨークでの生活でイグビーは何を学んだのか。

これがね、小説だったら感動する内容なんだけど。でもなんだかうまく伝わらない。なぜだろう。監督は『10日間で男を上手にフル方法』の脚本家でフランスの脚本家ゴア・ヴィダルの甥というバー・スティアーズ。『10日間で男を上手にフル方法』同様、おもしろい内容なのに、音楽が今っぽすぎるので興ざめする。コールド・プレイとか使っちゃったりして。映画の中の音楽、特にポップス的ロックを扱うのは、媚びを感じて、なんか苦手。

最近観た作品で最高に素晴らしい音楽の使い方をしていたのはアダム・サンドラードリュー・バリモアの『50 first dates』!最後に流れるビーチボーイズの「would'nt it be nice」は、歌詞と映画の内容が美しくリンクして、思い出しても泣ける。映画も人生もやっぱり愛!


『カンヌSHORT 5』
カンヌ国際映画祭の短編部門で絶賛された5本。アップリンクXっつう新しい試写室にて。渋谷東急本店奥にある老舗雑貨屋ブルー・ブルーエの手前のビル。

『fast film』(ヴァージル・ヴィドリッチ監督/03年/オーストリアルクセンブルグ/14分)は、既成の映画からのシーンをコラージュして全く新しいストーリーを作っている作品。アクション・ラブロマンスなテイストをユーモラスに描いていて楽しい。

『Do you have the shine? 』(ヨハン・ターフェル監督/02年/スウェーデン・フランス/6分)は、タイトル通りキューブリック監督の『シャイニング』の廊下のシーンをそのままゲーム画像風にした作品。観客が三輪車に乗っている男の子になって、双子姉妹に会わないようにするゲームを想定した映像が続く。オチはなし…。

『Field』(ヂュアン・ホプキンズ監督/01年/イギリス/10分)は、イギリス郊外の羊牧場を舞台に、男の子3人組が淡々と遊びながら、怒りが膨れ上がる様、狂気が爆発する様を美しい映像で描く。セリフがないだけに映像から狂気を想像していくので、自分なりの恐怖が襲ってくる。

『Play with me』(エッサー・ロッツ監督/02年/オランダ/13分)は、川を行くボートに繋がった浮き輪に掴まり、気持ちよさそうに水と戯れる水着の女の子。草の上で男の子と戯れている女の子。気持ちよく佇む女の子に突然襲いかかる、不条理なまでの危険。抽象的だけど怖くて美しい。

Janne da arc on the night bus』(コーネル・ムンドルッツォ監督/03年/ハンガリー/25分)は、事故現場から被害者を救急センターに運ぶシーンから始まる。緊急事態の中、医師たちがオペラを高らかに歌いながら手術の指示を出す。驚く間もなく、血塗れの被害者たちも歌い上げる。被害者役と医者役を演じた予行練習だったことが次第に分かる中、一人の被害者役の女性が何故だか現状への不満に対して蜂起し皆を扇動し始める。その姿はフランス国民を救ったジャンヌ・ダルクのよう…。血塗れオペラ…。