『アンダーワールド』レン・ワイズマン監督単独インタビュー

tofu22004-07-15


 ヴァパイア一族と狼男一族の壮絶なる戦い、そして人間との悲恋を描く、ゴシック・サイバー・アクションが公開される。アクション・ヒロインとしてヴァンパイア女戦士に扮するのは、『パール・ハーバー』のケイト・ベッキンセール。ブラックレザーのロングコートに身を包み、新たな美しさと魅力をスクリーン上に映し出したのは、CG界の寵児、レン・ワイズマン監督だ。初監督作品となる本作でダークな美意識を見事に映像化しただけでなく、ケイトとプライベートでのパートナーとなったという、レン・ワイズマン監督に単独インタビュー。


■伊藤:初来日とのことですが、日本の印象はいかがですか?

レン・ワイズマン監督:初めて日本に来たんだけど、とても美しいね。というか、実は、レストランとかしか行っていないんだけど(笑)。でも、街にゴミが少ないのにはびっくりした。僕はサンフランシスコ育ちでロスとかニューヨークにも住んでたことがあるんだけど、こんなにきれいに片づいている街は初めて見たよ。


■伊藤:観光などは全くしていないのですか?

レン・ワイズマン監督:そうなんだ、でも、マンガ専門ショップには行ったよ。コミック専門店の「まんだらけ」とフィギュア専門店「ブリスター」に行ったんだ。コミック・ブックがすごく好きなんだ。コミックというか、イメージ・ブックかな。ストーリーがあるものでなく、イメージ画がまとめれているものが好きで、特にトッド・マクファーレン(「スポーン」などで有名)のカラー作品が大好きなんだ。僕の映画『アンダーワールド』は、トッド・マクファーレンのイメージ・ブックに大きく影響を受けているよ。


■伊藤:何か買われましたか?

レン・ワイズマン監督:アクション・フィギュアを…(笑)。「スポーン」や「エイリアン」、あと日本のマンガの「トライガン」も。


■伊藤:「スポーン」や「エイリアン」って、わざわざ日本で買わなくてもよいのでは?

レン・ワイズマン監督:いやいや! アメリカで未発売だったり、手に入らなかったりするモデルがあるんだよ。あまりにもたくさんあったんで、買ってしまったんだ。もちろん、子供みたいに騒いだりしないで、クールにショッピングしたよ(笑)。


■伊藤:ところで『アンダーワールド』の物語は、どこから発想されたのですか?

レン・ワイズマン監督:冗談から生まれたんだ。最初は、狼男の物語にする予定だったんだけど、アイデアを詰めている段階で、敵役はどんなキャラクターだったら一番おもしろくなるかって、話になって。警官だったり保安官だったりが、謎の死体を発見して犯人を追っていったら、狼男だった…、っていうのは、全く新鮮さがないだろ? 僕らが手掛けるなら、新しいものを作りたいって思っていたんだ。
 そんな時に、吸血鬼がライバルだったら、おもしろいんじゃないか?って冗談で言ったヤツがいてね。そのアイデアは最高だって思ったんだ。狼男とヴァンパイア! 能力的にも互角に戦える究極のライバルじゃないかってね!


■伊藤:ビジュアルも素晴らしい作品です。アイデアを映像化するにあたって、こだわった点は?

レン・ワイズマン監督:日常生活では決して目にしないような、シュールな世界を作ろりたかったんだ。コミック・ブックの中を歩いているような作品をね。だからロケーションや衣装にはこだわったよ。それに、映画の中での上空の映像は、CGで加工してあるんだ。現実とは違うシュールな世界観を表現しているんだ。『アンダーワールド』のビジュアルは、そういったこだわりがある作品なんだ。


■伊藤:ところで、好きな映画監督は?

レン・ワイズマン監督:ジェームズ・キャメロンリドリー・スコット! 誰かのキャリアをそっくりもらえるなら、絶対リドリー・スコットだね。あとは、リュック・ベッソンスティーヴン・スピルバーグとか。スピルバーグは子供のころによく観ていたからね。


■伊藤:ミュージック・ビデオやCMを手掛けていたそうですが、長編映画では初監督となります。違いはありますか?

レン・ワイズマン監督:責任が違うね。それと、プレッシャーも違う。なにより大きく違う点は、俳優たちとのコミュニケーション。ミュージック・ビデオでも俳優たちとのやり取りはあるけど、期間の長さが違う。だから最初は、演出する際に俳優たちと上手くやっていけるかって不安があったんだ。
ところが、実際に撮影が始まったら、みんながとても情熱的でベストを尽くしてくれる。お金のためだけに仕事するなんてことは、全くないって感じたよ。クールな映画を作ろうって、全員が一丸となってがんばってくれているのが分かったんだ。自分に映画での経験がなかっただけに、すごく楽しかったし、スリリングな体験もできたよ。


■伊藤:俳優たちとのエピソードで印象に残っていることは?

レン・ワイズマン監督:印象的なのは、やはりケイト・ベッキンセールとのこと。雨が降っている中、1日14時間、夜間まで撮影する、そんな厳しい状況の中で、僕と脚本家との部屋での打ち合わせに参加してくれたんだ。主演の彼女は疲れ切っているはずなのにね。それに、翌日の撮影分のアイデアをたくさん出してくれて、その場で脚本に書き込むこともできた。大変だったけど楽しかったよ。脚本家のダニーと僕は「学生映画を作っているみたいだな、まるでサマーキャンプだよ(笑)」って、ふざけ合ってたくらいなんだ。
 でも、彼女がそこまでやってくれるなんて、思ってもみなかった。この映画に対する彼女が持っている情熱には驚いたよ。これから先も映画を作っていく上で、そういう関係を持ち続けられるとうれしいと思う。また、そういった俳優に、今後も巡り会えることを願っているよ。


■伊藤:ケイトさんとは、本作がきっかけでパートナーとなったわけですが、女優としての魅力、パートナーとしての魅力、それぞれお聞かせ下さい。

レン・ワイズマン監督:おっと、これは注意深く答えなきゃ(笑)! まずは女優としての魅力だね。それはなんといっても才能。そして、それと同じレベルでの、映画への献身さがあることだね。この2つが素晴らしいんだ。それとパートナーとしての魅力は、ユーモアのセンスを持っていること。それと、僕をハッピーにしてくれること。これは、言葉にするとシンプルすぎるかもしれないけど、一緒にいると楽しい気分になるっていうのは、とっても大切なことだと思うよ。もちろん、僕が今まで会った女性の中で、一番美しい女性だっていうこともね(笑)。


■伊藤:それでは、ケイトさんが、監督について、監督としての魅力、パートナーとしての魅力を、どう思っていると、監督自身は考えてますか?

レン・ワイズマン監督:そうだなあ。監督としては、情熱があって俳優たちが求めることをよく理解しているって思ってくれているんじゃないかな。彼女が実際に言っていたことなんだけど、監督がしっかりとしたビジョンを持っていれば、俳優はリスクを厭わないものなんだって。あなたは強いビジョンを持っているからって言っていたよ。パートナーとしては、そうだなあ、とんでもないヤツって言われるかな(笑)。まあたぶん、自分のことを分かってくれる人だって言うと思うよ。同じように、彼女も僕のことを分かってくれるんだ。


■伊藤:ありがとうございます。では最後に、この作品の見所を教えてください。

レン・ワイズマン監督:アクションやビジュアルを楽しんでほしい。と同時に、キャラクターが持つ深い歴史や物語を感じてくれるとうれしい。ぜひ劇場で楽しんでください。


ビジョンをしっかりと持ち、情熱を持って前進する監督である。ケイトへのアプローチも同様だったのではと思わせるお話をいただいたところで、『アンダーワールド』は続編も決定しているとのこと。そちらの進行状況を聞いてみると、「今まさに、脚本家のダニーが、別室でキーボートを必至に叩いている最中だよ」と教えてくれた。もしかしたら来日時のエピソードが続編に盛り込まれるかと期待しつつ、まずは本作『アンダーワールド』で、ダークでクラシカルな世界観に浸ってみよう! 11月29日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー。


【2003年秋インタビュー】