本日の試写

tofu22004-08-05


■『舞台よりすてきな生活*1』How to kill your neighbor's dog
2000年アメリカ/98分/マイケル・カレスニコ監督・脚本
製作総指揮/ロバート・レッドフォード


今年のベスト3に入るかも!文句なし!品があってユーモア抜群で音楽のセンス(今の気分に何故かぴったりなペトラ・クラークの曲の使い方)が抜群によくて、笑って泣ける。私的には、文句の付けようがない作品。

それにしても、ケネス・ブラナーがこんなに嫌味なくユーモラスな演技を軽やかにできる人だとは知らなかった。というか、たぶん、彼が変わったんだと思う。シェークスピア戯曲の舞台出身でカタブツ演劇人だった彼が、いい感じで歳を重ね、いい感じで肩の力が抜けて、俳優として一皮抜けたんだと思う。演技の基礎と実力があるわけだから(たぶん理論的にも完璧なんでしょう)、演技の中に遊びの部分を持ち込む余裕が出てきたんだと思う。初めてケネス・ブラナーを「いい感じの俳優さん!」って思った。『恋の骨折り損』の時は、形式ばった堅物がムリしてユーモラスに歌って躍ってみました感が、まさに「観ちゃって骨折り損だった」と思ったけど、それも今は昔なのね。いや、スタンリー・ドーネン作品で躍るフレッド・アステアのような華麗なダンスは素晴らしかったんですけどね。でもこの作品をきっかけに、これからのケネス・ブラナー作品が楽しみになりました。

それと、ロビン・ライト・ペンって素晴らしい女優なんだなと、改めて発見できた。スラリとしていて凛としていてキュート、まさに素敵な女性。実は、この作品を観て、彼女の女優としての魅力、素晴らしさを初めて実感した。ってことは、この映画は、私の感覚に、ばっちりフィットする作品だってことなんじゃないかと思う。

監督はこの作品が長編初監督となるマイケル・カレスニコって人。脚本もこの人。カナダのブリティッシュ・コロンビア出身の61年生まれの彼は、ヴィクトリア大学でジャーナリズムを専攻後、2年間旅に出て、アメリカのコンビア大学で映画制作を学んだ後、レポーター、墓掘り師、北極の高校の英語教師、バーテンダーとかやった後、97年に『プライベート・パーツ』(ベティ・トーマス監督)の脚本でデビュー。本作が監督初長編作品。ロンズデール・プロダクションを妻のナンシー・M・ラフと設立したそうです。なかなか多彩な職業の経歴あり。次の作品が楽しみな監督です!

あ、あと、この作品の中にイギリス色がめちゃ多いんだけど、なぜ?主演がイギリス出身の俳優のケネス・ブラナー、彼のドッペルゲンガー的キャラがジャレット・ハリス(リチャード[ホグワース校長]ハリスの息子、『17歳の処方箋』での彼も最高!)、イギリス車、ペトラ・クラーク(イギリス出身の歌手)などなど。ちょいと気になる所…。

      • -

試写日記(キノキノ掲載)

文句なく面白い映画を観た。たぶん今年のベスト3には入ると思う。品があってユーモアと皮肉の組み合わせが巧みで音楽のセンスが抜群によくて、笑って泣ける。12月頃公開予定のケネス・ブラナーロビン・ライト・ペン主演の『舞台よりすてきな生活』。自分のことばかり考えている大人たちが、ある少女を通して、新しい視野を得てちょっと成長する。簡単に書けばこれだけなんだけど、とにかく演出が上手いのだ。人物描写に無駄がなくテンポがよいから気持いいくらいに映画の中に引き込まれる。例えば、主人公の劇作家の現状が分かるシーン。新作の芝居稽古のシーンで、客観的で意味不明なセリフばかりを棒読みする俳優たちを映す。しらけムードの中、唐突にペトラ・クラーク(英出身の女性歌手)のモノマネをする若手演出家が登場して、全員が呆然とするシーンを見せる。何が悪いかは一目瞭然、脚本がダメなのだ。台本が生き生きしていないから誰もやる気になれないというわけ。つまり主人公の劇作家はスランプ中なのだ。さらにこのシーンだけで、他のキャラクターの背景も全て描かれている。才能ある演出家はゲイが多いらしいとか、どんな俳優でもくだらないと思われることにプライドを持っているとか、小さなネタがたくさん入っている。笑いながら共感するネタがあるから、ついつい映画の中に引き込まれてしまう。ユーモアと皮肉を含めてテンポよくサクサクと場面展開していきながら、登場人物の背景を最小限の描写で全てを表現する。こういう映画って、意外と少ない。ドカっと派手なアクションたっぷりの大娯楽映画も大好きなんだけど、普通の生活の中で喜んだり怒ったり恥ずかしがったりケンカしたり笑ったりしている人たちを、自分と同じだなあとか思いながら、テレながら笑って見る映画も好きだなと、思ったりした。