全ての音楽ファン必見!

tofu22004-08-25

ヒップホップ・カルチャーの誕生を描いた映画『SCRATCH』が日本上陸


ヒップホップ誕生の瞬間が体感できるドキュメンタリー映画『SCRATCH』が日本に上陸した。映画に登場するのは、音楽の概念を変えただけでなく、ストリートのファッションやアートをも内包するカルチャーとして、ヒップホップを現在に到るまで定着させた伝説のDJたち。70年代から80年代に彼らが体現してきた瞬間の数々はまさに伝説の瞬間であり、音楽と文化の革命の瞬間でもある。


映画『SCRATCH』には伝説とストリートにある現実がうごめいている。まずは、ニューヨークのストリートで学んだ生き方を反映した音楽観をヒップホップの定義にした伝説のオールドスクールの巨匠、Afrika Bambaataaがいる。73年にZulu Nationという組織を立ち上げた壮大な思想を感じ取る映像の数々は、全ての音楽ファンは必見だ。また、音楽の歴史を変えた演奏テクニックである「スクラッチ」の生みの親、Grand Wizard Theodoreがいる。ターンテーブルのレコード盤を前後にこすって生まれる逆回転サウンドをパーカッションのリズムとして取り入れた張本人だ。そして現在最もテクニックのあるDJとして知られるスクラッチDJの神様、Q-Bertがいる。ニューヨークのJohn Carluccio主催のバトルサウンドターンテーブリスト・フェスティバルでの超絶プレイが目の前に登場する。さらにJazzy Jay、Grand Mixer DXT、Mix master Mike、DJ Shadow、Rob Swift、そして日本が誇るDJ Krushなど、現代のトップDJたちのダイナミックなパフォーマンスとインタビューが溢れている。特にGrand Mixer DXTがハービー・ハンコックの伝説のトラック「Rock it」をグラミー賞授賞式でソロスクラッチを披露する姿は、ターンテーブルを楽器として新しい次元に引き上げた瞬間として圧巻だ。


■歴史的瞬間とリアルなグルーヴが満載!
ドキュメンタリー映画『SCRATCH』が世界を震撼中!


ラップやブレイク・ダンス、グラフィティーとともにヒップホップの4つの要素のひとつである「スクラッチ」。楽曲に最も影響を与える要素である「スクラッチ」の世界を描いたドキュメンタリー映画『SCRATCH』は、01年にサンダンス映画祭で世界初上映されて以来、各地で上映される度にチケットは売り切れ続出だという。ついには『SCRATCH』に登場したDJたちによる「スクラッチ」ライブ・コンサート・ツアーを敢行し、全米13箇所に続きオーストラリア、ニュージーランド、そして02年12月には日本にも上陸、多くのファンが詰めかけた。


既存の音を奏で、ビートとビートの狭間に新たなグルーヴを生み、DJ独自のセンスでオリジナルのリズムに変換する。ターンテーブリストたちから生まれるリズムが、パーティ・フロアにいる観客のグルーヴとともに、今まで聴いたことのない新しい音が誕生する。この瞬間そのものがヒップホップの一部となって今に至っていることを本作は体現させてくれる。音楽の歴史の中で、パンク以来の革命とも言えるヒップホップの誕生を描いたドキュメンタリー映画『SCRATCH』は、82年のヒップホップのドキュメンタリー映画『ワイルド・スタイル』とともに、歴史的瞬間が凝縮した必見のドキュメンタリーだ。

【2003年1月公開時レビューとして】