『アマンドラ!希望の歌』リー・ハーシュ監督インタビュー

tofu22004-08-02



1948年から南アフリカで合法的に施行されてきた人種差別政策「アパルトヘイト」。長きに渡り弾圧されてきた黒人たちは、抵抗の歌とともに自らを鼓舞し、自由への道を一歩一歩進んでいく。音楽の力強さを伝えてくれる『アマンドラ!希望の歌』を監督したリー・ハーシュ氏にインタビュー!

伊藤:音楽が好きな人にとってアパルトヘイトというと、スペシャルAKAの「ネルソン・マンデラ」やピーター・ガブリエルの「ビコ」などで、ポイント的な知識として知っています。でもこの映画は、歴史的な流れを音楽で掴んでいてとても感動しました。監督にとって、そもそもアパルトヘイトを知ったきっかけは何だったのですか?


リー・ハーシュ:僕が15歳の時です。反アパルトヘイト運動が頂点にあった時期だと思うけど、とにかく大きな問題だったから自然に知ったんだ。そしてテレビなどを観て学んでいった。また、南アフリカに住んでいる人たちが僕らの街に来て、スピーチする集会に行ったりした。そしてこの問題に身を投じたんだ。


伊藤:音楽を焦点にしてドキュメンタリーを描いた理由は?


リー・ハーシュ:この映画のテーマは、音楽の力。僕と南アフリカの接点というと、やはり音楽なんだ。僕が活動家としてこの運動に参加していた時、僕らと同じような若い世代が闘争の先頭に立っていた。彼らは自分たちで音楽を作り、エネルギーを作り出していたんだ。そのことにとても共感したんだよ。それらの音楽は、僕にとても訴えかけてきた。このことは、今でも僕に強力に影響を与えている。『アマンドラ!希望の歌』も、若い人に訴えかけているようだね。音楽の力が僕らの接点だよ。


伊藤:音楽から影響を受ける人は多くいます。撮影中にミリアム・マケバなど有名なミュージシャンにお会いしてますがその印象は?また、撮影中のエピソードは?


リー・ハーシュ:多くの人に会ったから一人を挙げるのは難しいな。映画を作るために300時間費やしたんだけど、その中から1時間45分までにカットしたので、実際に取材したけど映画として使われなかった人もたくさんいるんだ。でも、メイドの生活をテーマにした歌が印象的だった。そしてタンディ・モディセという女性活動家には感銘を受けた。牢獄で出産した女性だよ。あとは、ミュージシャンではヒュー・マセケラ。彼の音楽は自分に大きな影響を与えたんだ。彼とは今でも、キューバに行っては、よく会っているんだよ。


伊藤:当時のニュース映像も盛り込まれていますが、どのように手に入れたのですか?


リー・ハーシュ:資金が多いわけじゃないので、大変だったよ。ほぼ一年くらい掛かったかな。過去に観たことがあるような映像は使いたくなかったしね。だから多くの映像作家たちにコンタクトをとって、彼らが持っている映像を借りたんだ。映画作品としてフィットするものをチョイスしてたから、おもしろい映像が集まったと思うよ。


伊藤:この作品が公開された国はどこですか? また反応は?


リー・ハーシュ:アメリカ全土、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、UK辺りかな。南アフリカは、生活に近い内容だから他の国と反応が違った。この映画を作ったのが南アフリカ人でなかったことに対して、ちょっとした議論が起こったりしたんだ。でも全体的にはみんながこの映画を愛してくれている。民主化10周年を祝った時に、オフィシャル作品として選んでくれたんだよ。他の国では、ほとんど同じ反応だった。それはメッセージが普遍的だからだと思う。日本でも劇場で観てもらいたいな。