本日の試写

tofu22004-08-09


■『ニュースの天才』[shattered glass]2003年/アメリカ/94分/ビリー・レイ監督
出演:ヘイデン・クリステンセンピーター・サースガードクロエ・セヴィニー


スティーヴ・ザーンとかロザリオ・ドーソンとか、出演者が私好みの人ばかりでびっくり。製作総指揮がトム・クルーズってのもびっくり。


物語は、25歳でアメリカ大統領専用機内に唯一設置されている政治雑誌「the new reppublic」の最年少スタッフとして特ダネをスクープしまくっていたスティーブン・グラス氏の栄光と挫折。


この映画は世界的なニュースにもなった事実がベースになっていて、スーパー・ジャーナリストと思われていた彼の執筆した41本の記事のうち、27本が捏造だった事件があって、まさに事実は小説よりも奇なりって感じで、世界中に衝撃が走りまくったのが、98年のこと。嘘のようなこの真実を、ピュリッツァー賞作家バズ・ビッシンジャーが「vanity fair」誌に記事を寄せて、それを映画化したものが『ニュースの天才』。


これ、映画としてとってもおもしろい。25歳の青年が、なぜ捏造記事を27本も書いたのか。


「優れた有名ジャーナリストになるため」だと思いきや、本当の理由は「みんなに愛されたいため」だってのが泣ける。映画では、彼の幼稚性がとてもうまく描けている。母性をくすぐる最年少のアソシエート・エディター・スタッフって雰囲気をちゃんと表現されているのだ。


何気ない会話をしながらスタッフに取り入ったり、女性スタッフに常に声を掛け、キャンディだとかクッキーだとか、どうでもいいけど、結構うれしい、おやつとかをあげたりして、社内コミュニケーションを取りまくる。上司に注意されたら、すぐにみんなに相談しみんなに愛される僕ちゃんになっている。打ち合わせ中も、ユーモアを交えて会議の中心人物になり、みんなのアイドルのような存在となっていく。そう、彼はみんなに愛されたいがために、注目を集める記事を書き続けなければいけなかったってわけでなんかね、今っぽい話。ダメさ加減が炸裂で、自覚してないけど、こういう人、結構いる感じが…。


ヘイデン・クリステンセンが演じているのも功を奏していて、事実がバレていく過程で、あまりにもヒドイ言い訳をする彼の姿は、「そんなに僕をイジメないで」って泣いているかのようだった。


捏造記事だと分かった出版社は、全ての捏造記事の裏をとり、その結果を発表したわけだけど、それはプロファッショナルな対応。プロフェッショナルな世界で生きていくことは、どういうことなのか。人として、プロとして、ジャーナリストとして何を指針にすべきなのかってこととかを考える映画でもあるし、これ、すごくおもしろい。