「新世代フレンチ・セレブの恋愛観」

tofu22004-07-11


「恋をしている時は不安定なもの。でもアンバランスの中でこそ人生は前進するのだと思う」(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキラクダと針の穴』監督・主演)


フランス映画界にいなくてはならない才能豊かな女優の一人。初監督作品『ラクダと針の穴』で、愛すること、愛されることに困惑しながらも、本当の愛を見出そうとする女性を演じている。そんな彼女に恋愛について聞いた。



■伊藤:初監督作品が公開された心境をお聞かせ下さい。

■テデスキ:6年掛けて自分自身を映画に投影させて作った作品なの。だから作り終わった時、自分の人生の一部が終わってしまったかのような感覚になったわ。それに、作品を他人の手に渡すって行為は、まるで自分のお葬式をするかのような気分だったの。とても暴力的なものを感じるわ。自分で監督した作品が人の手に渡る、これはとても強い感情を伴うもの。映画の中で語っていることに責任を感じるわ。


■伊藤:この映画のテーマは?

■テデスキ:いくつかテーマはあります。音楽にいくつかの楽章があるのと同じ。仕事、家族、愛、信仰。いろいろね。中心となっているのは、父の死だと思います。主人公の女の子が父との関係をどうやって築いてきたか、辛い父の死をどうやって受けとめたか、一方で辛い経験であるとともに、彼女にとっての一つの解放でもある。


■伊藤:撮影で楽しかったこと、難しかったこと、こだわった点は?

■テデスキ:大変だったのは、自分がこの映画を作ることに対して。本当に作れるのかとか不安になったり、勇気がなくなったりして、パニックを起こしたこともあった。その時期を越えるのが大変だったわ。でも、スタッフたちが勇気を出すように私を支えてくれたの。彼らがいなかったらこの映画はできなかったと思うわ。
 楽しかったのは、撮影の時ね。撮影は苦しくて、その苦しみがずっと最後まで続くんだろうって思っていたけど、俳優たちと一緒にいれてとっても楽しかったわ。自分でも驚いたけど楽しかったのよ。


■伊藤:家族や恋人との関係に悩む、バランスの取り方に悩む女の子が友人にいたら、どういうアドバイスをしますか?

■テデスキ:この映画は、バランスを取ることを探している女の子の話じゃないわ。むしろ、自分の自由を探している女の子の話です。特に恋をしている時は不安定なもの。でもアンバランスの中でこそ人生は前進するのだと思う。だから弱い自分でも、いろんなことを理解していけるし、自分を変えていくこともできるのよ。難しい時期、苦しい時期にいる人は、そのことをバネにもっと自分の可能性を引き出せることができるのじゃないかしら。




ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
<profile>
1964年、イタリア・トリノ生まれ。名門ブルーニ家に育ち、パトリス・シェローのもとで演劇の経験を積んだ後、同監督作品『フランスのホテル』やジャック・ドワイヨン監督の『恋する女たち』などに出演。その後、『おせっかいな天使』や『私を忘れて』に出演し、フランス映画界で最も才能溢れる女優として注目を集めている。妹はスーパーモデルから歌手に転身したカルラ・ブルーニ。


■作品データ■
ラクダと針の穴』Il est plus facile pour un chameau...
2003年/105分(フランス公開:03年4月16日)
監督・出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(『愛する者よ、列車に乗れ』)
出演:キアラ・マストロヤンニ(『クレーヴの奥方』)、ジャン=ユーグ・アングラード、ドゥニ・ポダリデス

<イントロダクション>
『おせっかいな天使』の女優テデスキの監督デビュー作。自伝的作品で、自分の役を自ら演じ、妹のカルラ・ブルーニ役はキアラ・マストロヤンニが演じている。他にジャン=ユーグ・アングラードイヴァン・アタル、ドゥニ・ポダリデスら豪華メンバーが出演。タイトルは、聖書の一部「金持ちが神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通るほうが、まだ容易い」から取られたという。

<作品紹介>
莫大な遺産を相続したフェデリカ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)。それが精神的な妨げに…。家庭観の相違がありすぎる婚約者、突然姿を現す昔の恋人、最愛の父の死の宣告。周囲の人間との関係に苦しむフェデリカは、想像の世界に安らぎを求めてしまう…。