「新世代フレンチ・セレブの恋愛観」

tofu22004-07-10


「“premier fois(初めての出会い)”という感覚を大切にすること。最初の出会いで感じたことって美しいよね」(マチュー・アマルリック『運命のつくり方』主演)


アルノー・デプレシャン監督の『そして僕は恋をする』で日本でもファンの多いマチュー・アマルリック。大きな瞳で相手をのぞき込みながら落ち着いて話す大人の魅力を持つ俳優だ。とはいえ、ワインを飲みながらゆっくりとした口調で話す内容といえば、ジョークばかり。そんな親しげな性格が多くのファンを魅了するのだろう。『運命のつくり方』では、駆け出し映画監督を演じ、歌って躍る姿を見せてくれたマチュー・アマルリックに恋愛について聞いた。




■伊藤:『運命のつくり方』のテーマは?

■マチュー:この映画の企画のとき、ジャン=マリー監督は、仕事を持つ妻と暮らす二児の父親だった。だんだん奥さんの方が忙しくなってきて、彼が子供の世話をするってことが実際にあったらしいんだ。そしてあらゆるトラブルが起こり始める。若い夫が悩み始めるってわけ。現代は、複雑なものを備えた男にならなければならなくってきている。女性にやさしくしなければならないし、男らしくしなければならない。でもあまり強すぎてもいけないし、夢を見せてあげなければいけないし。すごく複雑だよね、現代の男は(笑)。現代の男はちょっと迷ってるよ。このテーマは普遍的でもあり、現代のテーマでもあるね。


■伊藤:もし、友人が同じような悩みを抱えているとしたら、どんなアドバイスをしてあげますか?

■マチュー:ううん、そうだね。“premiere fois(初めて・最初・一回目)”という感覚を大切にすることが重要なんじゃないかな。最初の出会いで感じたこととか、初めてのことって美しいことだと思うんだ。最も大変な人生の冒険とは、カップルになることなんじゃないかな。おそらく山登りよりも、もっと大変なことだと思う。この映画は、恋愛って素敵なものだなって思えるはずだよ。恋愛を信じられなくなったら観てください。


■伊藤:映画でのミュージカル・シーンは、実際に歌われたんですか?

■マチュー:うん、僕が歌った。最後のクレジットが流れてスキーで降りていくシーンは、フィリップ・カトリーヌなんだけど、それ以外はエレーヌと僕だよ。それと最後の裸にシーンは、アフレコじゃなくって、カメラの後ろにギターを演奏しているフィリップがいて、生で演奏したんだ。


■伊藤:歌うのは今回が初めてですか?

■マチュー:いや、ジャンヌ・バリバール(マチューの元パートナー)が撮った作品で歌っているよ。その作品で、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」を歌ったんだ。それと、プリンスも歌ったよ。ヒューマニズムの運動の中で歌うシーンなんだ。アマチュア・ミュージシャン役。まだ作品として仕上げていないみたいだけど(笑)。





マチュー・アマルリック
<profile>
1965年10月25日パリ生まれ。オタール・イオセリアーニ監督の『お月様のお気に入り』に友情出演後、映画に魅せられ、ルイ・マルなどの助監督などを務める。アルノー・デプレシャン監督の『そして僕は恋をする』以来、俳優としての才能も高く評価され、個性的な監督の作品に多く出演する。監督としても才能を発揮し、元妻のアンヌ・バリバールを主演に『スープをお飲み』『ウインブルドンの段階』を監督。『スープをお飲み』は、ゴダールに「僕にとってのヌーヴェル・ヴァーグだ」と言わしめた。


■作品データ■
『運命のつくり方』Un homme, un vrai
2002年/121分(フランス公開:03年5月28日)
監督:ジャン=マリー・ラリユー、アルノー・ラリユー
出演:マチュー・アマルリック(『そして僕は恋をする』)、エレーヌ・フィリエール、ピエール・ペレ

<イントロダクション>
新進気鋭ラリユー兄弟によるユーモアある不条理で展開する注目作。恋に落ちた男女を3部構成で描くミュージカル・コメディ。主題歌を含め、本作の音楽を担当しているのは、フレンチ・ポップスの旗手、フィリップ・カトリーヌ。

<作品紹介>
 映画監督を目指すボリス(マチュー・アマルリック)は、企業のPRフィルムの制作中。そこで出会ったキャリア・ウーマンのマリリン(エレーヌ・フィリエール)と恋に落ち結婚。5年後、ふたりの子供たちに恵まれ、マリリンの仕事も順調。しかし、主夫業に嫌気がさしたボリスが別れを切り出そうとしたとき、マリリンが女性と失踪。それから5年。ピレネー山脈で山岳ガイドとなったボリスの前にマリリンが現れた…。