ゼメキス節炸裂

tofu22004-11-29


ロバート・ゼメキス監督の『ポーラー・エクスプレス*1』を観た。TOHOシネマズ六本木で12:30の回。無料チケットをもらったので、映画代はなし。だから平日の真っ昼間に贅沢な気分で観るかなってことで、キャラメルポップコーンとジンジャーエールをがっつり抱えて、アメリカンなゆったりシートで、オタク監督の児童書アニメーションを観てみたよ。観客は、ママと僕の二人組が3組、カップル3組、私だけ。大スクリーン独り占め状態。空いているシネコンって大好きだ!


映画はね、もう最高におもしろかった!いきなり狂喜じみたアングルが炸裂ですよ。可愛くも何ともないハイパーリアルな8歳の少年の目玉の超ドアップで映画はスタート。まつ毛のウネリも分かるほどの眼、というか眼球のみが大写し。怖いっつうの。まあ、クリスマスの児童書らしく、イブの夜中に部屋のベッドで、サンタを気にしながら眠れない少年がウロウロしてたりするわけだけど、児童書らしいのはここまで。サンタを信じることを今年でやめようと決めた少年を迎えに来た機関車「ポーラー・エクスプレス」が登場してからは、ありえないほどに極端なアングルと構図が炸裂です。


両足の間をぬって通り過ぎながら列車の窓を抜けて雪山の頂上を越えて天高く登ったと思ったら、超特急で下降しながら直滑降で濁流のしぶきをあげる滝の水面間近を這いながら、猛スピードにスクリューしながら線路に戻り、列車の窓の隙間に入り込む映像を一気に見せる。意味不明なほどにゴージャスなステップが炸裂する謎ミュージカルが登場したり、かゆくなりそうなほどに無数なエルフがわらわらと溢れかえったり、もうやりたい放題ですよ。これ、全部ハイパー・リアルなアニメーション。さらに凍りついた湖に突然ビシビシとヒビが入り、バキバキっともの凄い勢いで裂けながら襲ってくるとかがあったりで、軽く恐怖映画状態だったりする。さすがはB級ホラーマニアのゼメキスだな。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも、何気にチャック・ベリーのステップは白人が発明したものだった!っとか、無謀なイジワルをしでかす人ですし。。。

それと同様にちょいとばかり狂ってることが判明したのが、トム・ハンクス。彼は少年と少年の父親と車掌とサンタクロースと浮浪者風ホーボー男を演じてるらしい。大袈裟な演技がどう見てもハンクスですよって感じで、ほとんど一人芝居状態。しかも結構、ご本人は嬉々として演じてる雰囲気。思えばゼメキス監督との作品はほとんど彼一人で作っちゃってるものばかり。『キャスト・アウェイ』しかり『フォレスト・ガンプ』だって、無垢を装ったイジワル映画じゃん。で『ポーラー・エクスプレス』でのハンクスさんが、何故5役をやったかっていうと、パフォーマンス・キャプチャーという技術で、俳優の演じた動きだけでなく顔の表情までもがコンピューターに採り入れることができるシステムを使えたからなのだとか。だから、8歳の少年の動きを8歳の少年に演じてもらう必要はないってことになって、オスカー俳優トム・ハンクスがいるなら、彼が全部演じちゃっていいわけだよって発想なんだと。その発想、狂ってるね、ゼメキスさん。

こんなことを思いながら観た私もちょっとばかしおかしいかと思うけど、そんな私には、最高におもしろい映画でしたよ。


結局、サンタを信じない少年はどうなったか?一応、信じるようになってたよ。あれだけ怖い体験をしたら、そりゃ信じるさ…っつうか、大人になったら、同じことする人になるね、きっと。そう、この映画のテーマは「信じることを忘れるな」なのです。「鵜呑みにしろ」とは言ってません。私は、そう信じてますよ。


ということで、「国の政策を信じろ」という映画『フォレスト・ガンプ』の監督が撮った児童書アニメーションを観たあとは、マスコミの報道を「鵜呑みにするな」という映画『ニュースの天才*2』も、ただ今絶賛上映中なので、ぜひどうぞ。